働きながら書く人の文章教室 (岩波新書)



働きながら書く人の文章教室 (岩波新書)
働きながら書く人の文章教室 (岩波新書)

商品カテゴリ:一般教養,雑学,実用知識,学習
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働く者の目線で書くための文章読本

 本書は句読点の打ち方や修飾語と非修飾語の関係を解説しているわけではない。巷(ちまた)にあふれている文章入門書とは、ひと味もふた味も異なる。
             
 筆者は著名な「旋盤工・作家」で多数の作品を著している。それまで長い間、旋盤工として働いていた町工場(まちこうば)が不況で廃業したために、自ら誇りに思っていた「旋盤工・作家」の肩書きが消えたことに深い感慨を持っている。

 汗と油がしみついた作業服に身を包み、働く姿と町工場の実態を知らぬ者には筆者の作家活動は理解できない面もあろう。

 彼は好みの短編を筆写すると、ただ読むよりはずっと理解が深まるし、書くための勉強にもなり、そして形式や内容にこだわらず書きたいものを書いて「同人誌」に寄稿し、仲間と語らうことで文章修業になったと述べている。

 旋盤工としての労働経験を踏まえて「人はなぜ働くのか」というテーマが絞られときから、これなら書けるという確固たる信念が湧き、その信念が、いい本との出会いを生み、そこで学んだ感性が、豊かな表現力の土壌になったと語っている。

 休日出勤や残業も多かったそうだ。そのような悪条件の中で、いかにして書く時間を捻出したのだろうか。
 いくら休日があろうとも一気に書くのは不可能だ。その工夫のひとつには仕事の合間に思いつくままにメモを取り、それを起稿する際に当たっては、ふるいにかけ、取捨選択して作品を書き上げる際に活用したそうだ。

 様々な制約があったのにもかかわらず、日本の産業の下支えをしている町工場の労働者たちの姿を、働く者の目線で書かねばならぬという使命感が筆者にあったから可能であったのだという。恐らく健康管理にも充分に気を遣ったのではなかろうか。

 本書は働きながら文章を書こうと地味に努力を惜しまずに励んでいる人には勇気と希望を与えてくれる好著である。
                                           



自慢話が目に付いて。。。。

題名は、文章教室とある。よくある文章読本的なものを創造して手にした。帯にある「現場に腰を据えて」書いてきた作者のこれまでのやり方が語られているのは非常に良いと思う。作者がどの点に気をつけて文章を書いているかとか、どんなことを学んだかとか、を期待していたが、あまりそのような記述はなかったような。作者自身もあとがきで述べているように、〜賞の候補になっただの書かなくても、いいと感じた。何度も出てくるため、目に付いてしまって、最後にはまた出たよ。という感じになってしまってちょっと残念です。
誇りを持って生きる人の姿が浮かび上がる。

 作者は、長い間、旋盤工・作家という肩書きで、自分の足下、町工場とそこに働く人々を主に書き続けた人である。
 上から押し潰されて耐えている被害者の構図ではなく、下から日本の産業を支えているという構図もあり得るのではないかと、働いている自分の現場から、それまでとは違う視点で「町工場」を凝視し書き続けたのである。
 立場は違っていても、ここには書くということの原点が見える。書くという作業も、職人のようにこつこつと孤独な作業に耐えて、鉄を削っていく作業に似ているように思えるからだ。
 作者は、そこに自分を支えてくれ、切磋琢磨してくれた仲間のあったことも書いている。
 この本からは、働きながら書き続けた人の誇りを持って生きる姿が浮かび上がってきて、感動です。
 
声にならない民衆の声

あたかも全てのことに理屈が存在するかのように考え、理論武装され、何もかもノウハウ・ドゥハウで語られてしまう現代に、ふと手にしてほっとする、そんな一冊。
日本人の誰もが自分のことを中流だと思っている、そんな構図の中で、自分もそう思っていることにはっと気づかされ、それが傲慢なことなのか、しょうがないことなのか。でも、結局は全ての人が「営んでいる」日々の暮らし、クローズアップされることのない民衆の姿がこの著書には溢れている。
だけど、著者はきっと自分の周りの景色を見てそのままを書いただけなんだと思う。作品を一人歩きさせてしまうのではないかと考え始めると、私なんかがここにレビューを書いていいものかもためらわれてしまう。



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