消された覇王 (河出文庫)



消された覇王 (河出文庫)
消された覇王 (河出文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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古代史に興味のある方はどうぞ

記紀が政治的意図を持って編纂されたのは万人の知るところ、だが、これは「白い白馬」と言うようなものか。役人が編纂して「政治的意図」を持たない歴史書などある訳がないし、個人編纂だとてそれは同じ穴のムジナだろう。こうなると認識論の領域だが、甚だしい歴史改竄には誰しも義憤を感じるものだ。
かつて日本は古代に大英雄を持ったが、記紀は彼らを歴史から抹殺した。犠牲者は果たしてスサノオとその息子ニギハヤヒである、という内容。ちなみに梅原猛推奨、となっている。著者が検証資料として利用するのは数々の神社記録。
読んでいて「漫画ネタになるなー」とちょっと楽しい気持ちになったが、「そうだったかもしれないし、そうじゃなかったかもしれない」の領域で語気強く感情的な歴史語りをされると個人的にはついていけない。邪馬台国がどこにあったかは「心の遊戯」の世界以外では興味はない。著者はスサノオを織田信長と幾度も対比させつつ熱く語るが、その情熱は私には正直謎だ。資料至上主義でもなければ実証主義信者でもないが、しかしこれを「歴史学」というならおそらく歴史は学問の面目を失う。何度「見てきたんですかー」と突っ込んでしまったことか。もしかしたらこれは語り口の問題かもしれないのだが。
クソ真面目に読まなければ古代史好きの方にはそれなりに楽しい本だとは思う。後は、語りがくどくてエモーショナルでも気にならないという方。著者が語る神社巡りはとても楽しそう。写真を眺めながら旅情に誘われる。個人的には星三つだが、古代史好きの方対象に星四つで。
日本の黎明期を鮮やかに描き出す

著者は、神さまとして祀られている人は架空の人物でない、とのスタンスをとっている。何もないところから神話を作り上げることは難しく、私もまさにその通りだと思う。そのスタンスに則って、イザナギ、イザナミ、アマテラス、スサノオ、ニギハヤヒたちの相互の関係や人物像が本書で明らかにされていく。

神社に残る記録を重視するのはいいが、その記録自体の信憑性に疑問が残る点と、説明の仕方がくどい点が気になったが、著者は日本の黎明期を鮮やかに描き出している。邪馬台国や神武東征の説明も納得出来るものである。
古代史の暗黒部を知るためにいいかも

古代史に興味のある人にはよく知られているが、神武天皇が大和入りしたときには、既に饒速日命がそこを支配していた。記紀には、天降っていたとされているが、その祖先については記載が何もない。その疑問点を、素戔嗚尊の息子である、大歳が饒速日命そのものであるとして、根拠となった神社伝承を数多くあげている。それらの伝承を全て信じ込むのは全くおかしな事だが、何故素戔嗚尊を祀る神社がこれほど多いのかは確かに不思議である。トンデモ本とするのは簡単だが、古代史の暗黒部をこの本以上に書いたものはないだろう。女性らしく、それぞれの神社を訪れたときの感想が叙情的で素晴らしいが、逆にこの本が単なる感想紀行文であるとの印象も生じている。
邪馬台国論争に終止符を打つ

 古代の国と民の上に聳え立ち、大らかな翼ですべてを包む偉大なる神々。彼らはいったい、何ものなのか。これは、ぜひとも取り組まねばならぬ課題として、ヤマトタケルを書き終えた後の著者を衝き動かしたものである。栄光の神々、彼らは、日本の曙の覇王であった。覇王とは、スサノオと、その子供ニギハヤヒのことである。伝承で知った彼らの輝かしい覇王が、古事記や日本書紀ではあまりにもみじめで、異様な姿をしている。要するに、二人はそれぞれ手に負えない乱暴者、挙動不審の危険な人物として扱われている。
 記紀は消された覇王の嘆きの書だった、彼らを消すために記紀は書かれ、あの奇怪な神話が作られた、と著者は力説する。
 全国の神社を調べてみる時、スサノオを祀る神社がおびただしい。それにまつわる数多くの伝承を徹底的に調べ、分析考察していく。この父子は九州全土を制圧した後、都を大分県の宇佐に置く。これが邪馬台国の始まりであった。これが軌道に乗ると、ニギハヤヒを大和に送りこむ。これが倭国の始まりであった。このようにして、著者は日本のアポロン、ニギハヤヒをみごとに蘇らせ、日本建国の真相を再現して見せてくれた(雅)
面白い! それは確かです。

 原田常治著『古代日本正史』に強い影響を受けて書かれた著作。でも原田氏の著作が未読なので、どこが同じでどこが違うのか良くわかりません(すまん)。神武天皇の東征以前、すでに大和に天降っていた謎の天津神・ニギハヤヒ。彼がどこからやって来たのかについては『記紀』を読む人が必ず抱く疑問でしょう。このニギハヤヒをスサノオの子として結びつける試みが面白い。特に、ニギハヤヒの正体をスサノオの子共の中の1人に比定し、その活動の全貌を神社の分布や伝承から描き出す様には鳥肌が立つことも。

 ただし、強引だな〜、と思う解釈が多いことや、神社伝承をそのまま事実と受け取るような態度は疑問。なぜならばその神社伝承がいつ生じたのかという考証とは無縁だから。ひょっとしたら、国学者が日本各地にいた江戸時代以降かも…。

 がしかし、全国的には無名に等しい神社や伝承が数多く紹介されていることはうれしいし、第一、神話・古代史の推理として面白い。あと気になるのは、小椋氏のその他絶版状態にある著作が復活するのかどうかということ。ぜひ、復活して欲しいものだ。



河出書房新社
覇王転生―十一面観音とニギハヤヒ (伝承が語る古代史 5)
消された王権・物部氏の謎―オニの系譜から解く古代史 (PHP文庫)
「出雲抹殺」の謎 ヤマト建国の真相を解き明かす (PHP文庫)
神々の原像―『先代旧事本紀』に秘められた神々の伝承
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